
全道研究テーマ
一人一人の問題解決を実現する
令和6年度、北海道理科教育研究会(北理研)は「一人一人の問題解決を実現する」を全道研究テーマに掲げ、個の追究に焦点を当てて研究を進めました。第71回全道大会函館大会では、理科の学びを「『知』を様々なものに転移させ、新しい『知』を構築していくこと」と定義し、「仲間と共に、理科の学びをつくりあげる子の育成」を研究主題としました。この主題のもと、学習経験から転移される「知」を明確にし、それを支える教材や教師の関わり方を検討。これにより、子どもたちが学びを目の前の事象に転移させ、自ら追究のきっかけを見いだす姿を引き出せました。函館大会での公開授業や分科会、講演は、今後の理科教育で育成すべき力について深く考える機会となりました。
函館大会の公開授業では、ペットボトル内の空気を温める活動の中で、子どもが空気鉄砲の経験から「空気がぎゅうぎゅうにつまっているのではないか」と表現し、事象を判断する姿が見られました。私たちは、子どもたちが資質・能力を発揮し、問題解決の活動に夢中になり、さらにその能力を高めていくことを強く求めています。そのためには、子ども一人一人を丁寧に観察し、私たちの授業研究を適切に評価していくことが不可欠であり、これまでの研究を真摯に見つめ直すことが求められます。
「一人一人の問題解決」と題することの意義
5年生の『流れる水のはたらき』の授業では、子どもが川のモデル実験において、グループで話し合いながら「これまでと削られ方が違う。角度を変えた方がよい」と自ら条件を変化させ、水の働きに気づき、さらに追究の方向を変える姿が見られました。この子どもの追究は、他者との関わりによって広がりを見せ、自分らしさを発揮しながら探究を深めることができていました。
一人一人の経験や個性の違いは、事象を見る視点や判断に多様性をもたらします。この多様性を活かし、追究を「自分のもの」と捉える実感を得ることが、自らの追究や他者の存在に価値を見いだすことにつながります。これこそが、「一人一人の問題解決を実現する」ことの本質です。理科は、子どもが自然事象との関わりを通して問題を見いだし、科学的に解決する過程で資質・能力を育む教科であり、その科学的な追究において他者との関わりは極めて重要な役割を果たします。
私たち北理研は、「一人一人の問題解決を実現する」に向かって、「子どもたち」をどのように支えていくのかに力を注いでいるのです。
全道・札幌支部研究部長
冨田 雄介
(とみた ゆうすけ)
札幌市立伏見小学校