全道研究テーマ
一人一人の問題解決を実現する
本会は、発足時から、子どもの分かり方を捉え、子どもが生き生きと学ぶ子ども主体の問題解決の実現に向けて、研究を積み重ねてきました。
昨年度行われた第70回全道大会札幌大会では、「自分らしさを発揮する子どもの姿」に着目しました。その研究の過程で、子どもが自然に十分に浸ることが、対象となる自然事象から問題を見いだし、力強く追究を進める子どもの姿につながることが改めて浮き彫りになりました。札幌大会で公開された授業では、事象に浸り、子ども自身が自ら追究の方向を定めながら追究を進める姿が見られました。自ら事象に関わり、その事象の変化に対する判断を基に次の行動を選択していく。そういった子どもの姿を実現するための方策が盛り込まれた実践を実現しました。さらに、8本の研究発表を行いました。生活に身近な事象に浸ることを通して生まれる問題。充実した問題解決がもたらす他者の価値。振り返りの活用による自己調整力の高まり。自分ごとの問題解決と見方・考え方の自覚と発揮についての知見。そして、子どもの問題解決を支える基盤。これらそれぞれの支部の特色を生かした研究が進められることによって、北理研が目指す「子どもの主体の問題解決」へ迫る積み上げがなされたと考えます。
令和6年度は、この研究をさらに一歩進める1年とします。2年目となる全道研究テーマ「一人一人も問題解決を実現する」を具現化します。
「一人一人の問題解決を実現する」
4年『物のあたたまり方』の授業のサーモインクを入れた水を試験管で温めた場面で次のような子どもたちの姿を見たことがあります。ある子は、斜めになった試験管を見て、「縦にしても上の方から色が変わっていくのかな。」と試験管の角度によって変わるのではないかと考えました。また、ある子は、「上の方を温めたら、下から色が変わっていくのかな。」と熱する場所での違いについて考えました。また、ある子は「もっと大きなビーカーで温めても上から色が変わるのかな。」と容器の形や大きさとの関係について考えました。同じ事象を見ていても、その事象を見る視点やそこから考えたことには違いが生まれます。その後、他者の意見を取り入れて考えを変えるかもしれません。自分の考えを検証しようと実験方法を新たに発想するかもしれません。このように、子どもの追究は刻々とその子の個性に基づいて様々な方向に向かって進んでいきます。
理科は、子どもが自然事象との関わりを通して、問題を見いだし、解決する過程で資質・能力が育む教科です。つまり、一人一人が問題解決をする姿に目を向け、本当に、どの子もその子なりの追究を進めることができているのかを検討することが重要です。
令和10年度には全国小学校理科研究協議会研究大会北海道大会を開催いたします。私たちの理科観、子ども観、授業観を深め、北海道の理科を全国へと発信するために、各支部が全道研究テーマに迫る研究主題を設定し、全道を挙げて「子ども主体の問題解決」の意味と価値を明らかにしていきます。
全道・札幌支部研究部長
冨田 雄介
(とみた ゆうすけ)
札幌市立伏見小学校